王様達のヴァイキング

前置き

去年に連載終了している作品ですが、10巻くらいで一旦読むのを止めてしまっていて、最近になって完結していたことを知り一気読みしてドハマりした作品です。全19巻と長すぎず短すぎずな程よいボリュームなので、一気読みしたい派の自分にはとても有難い。
コミュ障ハッカーと投資家の異色コンビがIT業界を舞台に「世界征服」を目指す!という、いまいちピンと来ない設定ではあるものの、野球のルールを大して知らなくても野球漫画を楽しめるように、ハッキングやパソコンにさほど詳しくなくてもちゃんと楽しめる内容となっています。

対照的な主人公コンビ

本作はW主人公となっており、二人の主人公、18歳の少年と40歳のおっさんが出会う事から物語は始まります。
ボーイ・ミーツ・ガールならぬボーイ・ミーツ・マンというわけです。


是枝一樹
少年主人公の名前は是枝一希。コミュニュケーション能力無し。愛想無し。高校は中退。でもハッキングの腕だけはピカイチという尖った才能の持ち主。
バイト先のコンビニで、売り物のおでんの大根を「透けててキレイだから」と毎日10分以上眺めてクビになり、その鬱憤を晴らす為に消費者金融会社へサイバー攻撃(※犯罪です)を繰り返すなど、色々問題の多い主人公。


坂井大輔
おっさん主人公こと坂井大輔は、是枝とは対照的にコミュ力お化けの面倒見の良い性格。創業間もない企業に資金を供給する「エンジェル投資家」としてメチャクチャ稼ぎまくってるお金持ちのおじさん。

お金持ちの坂井さんが是枝のハッキングの腕を買い、その能力を使って「世界征服」をすべく二人は異色のタッグを組み、様々なサイバー事件を解決していきます。
陽キャと陰キャのようにあらゆる面で正反対な二人ですが、やる時はとことんやる、という所だけはそっくりで、この二人が本気を出すとIT関連の問題で解決できない事はないのでは?と思わせてくる無敵感があります。
ハッキング以外はポンコツな是枝を、資金面や顔の広さを駆使しながら坂井がフォローして、あらゆる問題を解決していく様は非常に痛快です。
また、優秀なハッカーなのにも関わらず能力を持て余していた是枝が、坂井と出会い導いてもらう事により、自分のスキルの活かし方を学び、精神的にも成長していく様子が丁寧に描写されているので、主人公の成長ストーリーとしても非常に楽しめました。

主人公の成長を見守る楽しみ

前述した通り、是枝は作中でも社会不適合者扱いをされるような少年で、序盤は普通に会話するのも困難なほど。また、常識やルールを無視して暴走する事も多く、その度に坂井に説教されるという展開が序盤は多くみられます。坂井曰く「頭の回転が早すぎて口が付いていかない」ので、要点をまとめて説明する事も苦手。
それでも坂井の導きや、事件を通して色んな世界の人と触れ合う事で成長していき、ルールの範囲内で犯罪者と戦う為に努力し、最初は出来なかった事も少しづつ出来るようになり、仕事を通じて出会った人達とも固い信頼関係を築いていきます。
複雑な生い立ちによって人付き合いが苦手になってしまった是枝ですが、根っこは純粋で仲間思いな性格で、恩人の坂井や仲間が危険に晒されると烈火のごとく怒るような熱い一面もあり、ヘタレだけどかっこいい!という相反する要素を兼ね備えた主人公でした。
ストーリーが進むにつれて、最初は出来なかった「要点をまとめて説明する」事が出来るようになったり、失敗してもそれを活かして次に繋げるなど、不器用な是枝が人間的に成長する過程はとても丁寧に描写されていて、是枝少年の成長物語としても非常に楽しめる作品でした。

魅力的な仲間達

個人的に一番評価したいポイントなのが脇を固める仲間達。
もう一人の主人公であり是枝の恩人である坂井を筆頭に、是枝の周りに集まる仲間達は揃いも揃って魅力的なメンズばかり。女性キャラも恋愛よりも仕事!な人達ばっかなので恋愛描写はほぼ皆無な安心設計。
どのキャラも信念や誇りを持っていて、男女関係なくかっこいい!と思うキャラばかりで、読んでいて不快感が一切なかったです。
特に是枝の周りには幼馴染、相棒、ライバルとニアホモ界の三種の神器と言っても過言ではない関係性のキャラがずらりと勢ぞろいしていて、それぞれがスタメンレベルの活躍ぶりを見せてくれます。もはや誰を押しにすれば良いのか分からない…。

ゴリラ君
幼馴染枠。是枝がくすぶっていた頃から唯一の味方として寄り添ってきた心優しきゴリラ
兄貴分として是枝の身を案じ、是枝が思い悩んでいる時に思わずゴリラ君の元げ逃げ込んだ際には、温かい言葉をかけて立ち直るきっかけを作る。尊い。

神崎刑事
相棒枠。直情型の熱血刑事。刑事である神崎に是枝が取り調べを受けるという最悪な出会い方をしたものの、事件を一緒に解決していく内に固い信頼関係で結ばれていく事に。
最初は「彼(是枝)と二人じゃ話が通じない」と嫌そうにしていた神崎刑事が、是枝の利用価値に気づき、最終的には満面の笑顔で「相棒!と呼ぶようになるまでの過程が尊い。好感度の変化が一番分かりやすい人。


笑い猫
ライバル枠。「武器商人」と呼ばれるクラッカーで、是枝のハッキング能力に魅せられ、是枝に対し変態的なまでの執着を見せる。是枝の能力を目の当たりにして「ねえ…俺と本気で付き合っちゃわない、是枝君?」などと供述しており、変態系執着枠も兼務している人。

上記のキャラ以外にも、是枝と同じく坂井のビルに居候しているベンチャー企業のメンバーとも、同じ釜の飯を食う仲間として交流を深めてたり。出番が少ないキャラでも、そのキャラの魅力や格好良さを限られたページできちんと描写してくれているので、脇キャラでも捨てキャラは一切居ないのが素晴らしいと思いました。

まとめ

とにかく面白かった!
萌えとか抜きにしても、少年の成長物語として非常に良質な作品だと思います。
ハッカーというあまり馴染みのないテーマではありますが、細かい部分が分からなくても熱い展開はしっかり楽しめますし、馴染みがないからこそ勉強にもなりました。
題材こそ難しいものの、ストーリーは主人公がレベルを上げて仲間を増やし、巨悪に挑むという王道まっしぐらな展開なので、変にややこしすぎずバランスのとれた内容だと思います。
終わり方も綺麗で、何度読み返しても楽しめる名作なので、未読の方は是非とも読んでみてください!
そしていつかアニメ化されるのを心待ちにしています!!