漫画(ファンタジー)

+C sword and cornett

王族ではあるものの妾腹で母親は平民という理由で冷遇されまくりな主人公ベルカが、兄の死をキッカケに色々頑張るファンタジー成り上がり物語。
ひねくれ者だったベルカが荒波に揉まれ成長する英雄奇譚としても十分楽しめますが、道中仲間に加わるリンナとの主従関係がギリギリホモじゃないけど限りなくホモに近い何かで非常に美味しかったです。
まずベルカとリンナの出会いの場が娼館。そこで女装ベルカに目を付け指名予告をして去っていくリンナ。小者臭がすごい。
この時点でのリンナはただの名も無きモブです。その後も予告通り娼館に花束持参でやってきたり、ピンチなベルカを助けてそこそこ活躍しますが名前はまだない状態。
ベルカの性別と出自を知った後からリンナの快進撃が始まり、モブ兵士から忠臣へとジョブチェンジ。顔面レベルもグングン上昇。
ベルカの方もただ一人、自分を王族として扱うリンナに対し戸惑いつつも信頼を寄せるように。ここら辺の不器用な二人によって繰り広げられる主従関係がひたすら可愛くて萌えます。

そんなベルカの戦いは過酷さを増して行き、交戦中リンナはベルカを庇い降りてきた鉄柵で串刺しに…。
身動きの取れないリンナを置いて逃げのびた後のベルカがとにかく痛々しくて可哀想でした。リンナの忠誠心に報いるために奮闘しながらも夜一人で泣くベルカきゅん。可哀想で哀れに思いつつも素晴らしき主従関係と未亡人の如き色気を醸すベルカに萌えるゲスな私。

その後紆余曲折経て再会を果たした二人。立派になったベルカの姿を見て嬉しくも寂しさを感じるリンナに、仲間達が「ベルカはお前が居ないとダメなんだぜ(意訳)」と各々でフォローしてアフターケアもバッチリ。

男と分かっていても女装ベルカにときめいちゃうリンナや、リンナが傍にいないとぐっすり眠れないベルカとか、一歩進めばホモになりそうだけどホモではないッ!というギリギリ加減がとても良かったです。

ゴールデン・デイズ

~簡単なあらすじ~
母親の過保護に悩む主人公・相馬光也が大正時代にタイムスリップしてしまう。祖父とそっくりに容姿をしていたので、行方不明中の祖父と間違えられて春日仁に保護される事に。祖父に恋愛的な意味で好意を抱く仁に戸惑いながらも、徐々に二人は絆を深めていく…。

花ゆめは思い出したように時折ホモをぶち込んでくるイメージでしたが、ゴールデン・デイズもその中の一作品と言えるでしょう。
主要人物の春日仁が、主人公の祖父に片思い中というトンデモない設定の持ち主ですが、そこに至るまでの過程も丁寧に描写されているので違和感なく受け入れられます。
主人公や仁の心の成長だけでなく、登場人物達全員の変化と救いが描かれていて、読後は号泣しつつも優しい気持ちになれました。
最初は「祖父が二重人格になり、性格が変わったのもそのせい」と主人公の存在を認めようとしなかった仁の心の変化、主人公と仁が互いに思い入れを深めていく過程。そういった心理描写がとにかく丁寧な作品でした。

水と器

人形師と生臭坊主の凸凹コンビが、人形にまつわる事件を解決していく連作短編集。江戸を舞台にした時代劇もので、怨霊や妖といったホラー要素もありますが、それほど恐ろしい感じではなく、どいらかと言えば人情ドラマに近い作品です。
「怨霊を退治するために身代わり人形を作ってほしい」と言う生臭坊主と、壊されるための人形を作る事を拒否する人形師。金銭面で余裕の無い人形師は、不本意ながらも生臭坊主の口車に乗る形で協力する羽目に…。

過去の記憶が無く、物心ついた頃から人形師である義父の背を追って、ひたすら人形を作り続けていた人形師。そのためか情緒面が未成熟で、喜怒哀楽に乏しく表情の変化もほとんどありません。そんな人形師が事件に巻き込まれ、それにまつわる人の情に触れて、少しづつ変化していきます。表情は相変わらず変化に乏しいですが、喜びを感じると笑顔の代わりに頭に一輪の花が咲くように…!見た目こそ美形でクールビューティ―な人形師ですが、物語が進むにつれて愛嬌のある面が出てきて、素直で天然な性格が見た目を裏切りまくってるのが凄くイイ!!

生臭坊主は長く追っている鬼を探すため、妖怪にまつわる事件に関わりながら情報収集をしています。世話焼きで人情に厚く、でも生臭坊主という言葉がピッタリな性格は、人形師とは正反対で共通する所は一切ありません。それでも利害一致した二人はコンビを組み、事件を解決するごとに互いに理解を深めていくように。

最終話は生臭坊主と因縁のある鬼の話がメイン。最初は人の心の機微に疎かった人形師が、相手の事を考え行動するようになるまで成長し、生臭坊主の抱えたものと因縁の終結を見守るというもの。生臭坊主は訳あり臭が序盤からプンプンしていて、人形師の成長と生臭坊主のバッグボーンが明らかになるラストは、最終話にふさわしい話だったと思います。

不器用な男二人が様々な事件を経て成長し、距離を縮めていく所もニアホモ的には見どころですが、事件の当事者達の人間ドラマも優しさと思いやりに溢れていて、読んでいて心が癒されるような作品です。作者の方はBLも書いてる方ですが、あからさまなBL要素は無く、けれども男性陣は非常に魅力的に美麗に描かれているので、癒されるニアホモ作品を求めている方におススメです!

KATANA

刀研ぎ師の家に生まれ、小さい頃から人や獣の姿を持つ「刀の魂魄」が見える、高校生刀研ぎ師の主人公・成川滉。研ぎの修行をしながら、刀にまつわる様々な出来事(もめ事)に巻き込まれてんやわんや…、というのが簡単なあらすじ。

刀と主人公、モノと人の物語ではありますが、擬人化された刀(魂魄)という事で、泣くわ怒るわと登場する刀達はとても個性的かつ魅力的。そして特筆すべきは、とにかく主人公が刀(の魂魄)達に愛されまくり!という点。ツンデレだったり禍々しいオーラを纏っていようとも、最終的に刀達は研がれて浄化され、主人公に感謝しつつデレます。「(主人公に)研がれたいのう…」と懇願する刀達のなんとも可愛い事。主人公の滉もあーだこーだ言いつつも、刀の言葉に耳を傾け、刀の為に誠心誠意尽くすめっちゃお人好しな良い子で、読んでいて癒される癒し系漫画です。

基本的には一本の刀の問題や悩みを、複数話掛けて解決していく「金田一少年の事件簿」や「名探偵コナン」近い形式で、登場人物(刀)は毎回変わります。その中で半レギュラー化するキャラが居たり居なかったり。刀にまつわる情報量が非常に多く専門用語も盛り沢山ですが、注釈や作中でも丁寧な解説が入り、知識のない人でも楽しめるよう工夫され、刀の事を楽しく勉強出来るのも嬉しいポイント。

刀と主人公の関わり合いがメインですが、主人公の家族やクラスメートなど、人間関係の掘り下げもしっかりされています。特に悪友的存在の京崎は、諸々の事情で若干浮き気味な主人公の数少ない理解者という美味しいポジション。刀以外に関しては消極的な主人公にもガンガン絡み、時には主人公の手助けもしてくれる相棒的な存在です。
いつの間にか主人公の家族とも交流を持ち、当たり前のように夕飯をゴチになってお泊りもしちゃう京崎。前述したように刀がメインの話なので、全く登場しない事も多々ありますが、出番がある時はがっつり活躍する中々にデキる男です。
高校生なのに一人暮らししてたりと、まだベールに包まれた部分も多いので、今後の京崎君の活躍に期待したいところ。

ニアホモ萌え目当てで買うと二度美味しいですが、刀を題材にした漫画として純粋に面白いので、是非とも一度は読んでいただきたい作品です。

氷の魔物の物語

出版社や、連載当初の掲載雑誌の傾向からボーイズラブ(BL)系のコミックスに分類されるが、性行為のシーンは一切なく、キスシーンはあるものの、性的な意味合いを含まないため厳密には区別できない。(Wikipediaより)

と、Wikipediaでもこの作品のジャンルをBLにして良いものなのかな!?(混乱)的な事が書かれてるので、限りなくBLに近いなにかなのでしょう。この白でも黒でもないグレーゾーンな作品こそ、ニアホモと言い表すにふさわしいのかもしれません。

物語は不治の病を患った主人公のイシュカが、死ぬために「入り込んで再び戻った者はいない」と噂される洞窟を訪れ、そこに封印された冷血な魔物・ブラッドと出会う事から始まります。自分の封印を解くためイシュカを殺そうとするブラッドですが、お人よし・無防備・マイペースと三拍子揃ったイシュカに、毒気を抜かれて絆され、なんだかんだありブラッドの封印も解けたので行動を共にする事になります。
魔物と人間は相いれない存在という世界観なので、種族間の対立によるトラブルも多く、出かければ何かしら事件に巻き込まれる主人公ズ。時には魔物に襲われ死にかけたりしながら着々と絆を深めていきます。まあ既にお互い好感度マックス状態なので、ただいちゃついてるだけとも言える。

主人公含むメインキャラ達は、BL漫画に出てもなんら違和感のない、独特な色気とホモ臭さを漂わせていますが、世界観や内容はしっかりと練られていて、ホモ臭いだけの漫画ではなく、がっつりファンタジー世界に浸れる内容となっています。
大きなスケールの話をきれいにまとめ、登場キャラを満遍なく活躍させて、大団円でラストを占める。読者的にはこれが理想的だけど、これを全て満たした作品を描ける漫画家はそうそう居ないと思います。そして読者の理想を詰め込んだハイクオリティな作品が今作である!と自信を持って言えます。

SILVER DIAMOND

植物を育てるのがやたら上手いという特技を持つ、高校生男子の羅貫(らかん)が主人公のお話。ただの庭は主人公の手が加わればたちまちジャングルに!という中々難儀な特技を持て余しつつ、意図せず大量に育った花を、花キューピットの如く配り歩くという、少し平凡とは言えない高校生活を送る日々。
高校生にして天涯孤独の身となり、若くして一人暮らしを余儀なくされた主人公の家に、異世界から千艸(ちぐさ)という青年が迷い込んだ事で、主人公の人生は大きく変化していきます。千艸からの情報によると、異世界では植物が枯れ果ててしまい、荒れた荒野が広がるばかり。限りある資源でなんとか生活しているものの、確実に異世界は終わりへと近づいているという…。主人公の植物を育てるのがやたら上手いという特技は、異世界では沙芽(さのめ)の力と呼ばれているそうで、植物が枯れつつある異世界にとって、主人公の力は必要不可欠である。

異世界トリップものでは「なんか知らないうちにファンタジー世界に飛ばされた!」というパターンが多いですが、今作は主人公の世界パートの尺も結構あって、主人公の世界でひと悶着あり、主人公が自分の意志で異世界へ渡る事を決心するという流れになってます。これが中々新鮮で良かった!

主人公の羅貫が意志の強い男前な性格なのもあり、荒れ果てた荒野と化した異世界に渡った後も、前向きに自分の出来ることをやろうぜ!というスタンスで、鬱々とした感じが一切ないのは良いなーと思いました。相棒ポジションの千艸も残念なイケメン道まっしぐらというキャラで、男前な羅貫に千艸がウットリして羅貫に怒られるor突っ込まれる、というのがお決まりのパターンとなってて微笑ましかったです。あ、あと色々訳アリで情緒未発達な千艸が、羅貫の(無意識の)情操教育により徐々に変化していく感じも、後半の展開の熱さも相まって凄く良かったです!ただの残念なイケメンはあまり…って感じですが、成長の余地を考慮した上での、敢えての残念キャラは大好きです。
日常パートでは千艸は羅貫の尻に敷かれてて、力関係は完璧に羅貫>>>>千艸。これがいざ戦闘となると千艸が羅貫を守り羅貫が千艸をフォロー、という風に戦闘時の力関係は千艸>>羅貫に逆転。お互い持ちつ持たれつの関係というか、片一方だけに寄りかかるのではなく、互いにバランスよく支えあってる良い相棒関係でした。イケメンキャラが多く、それぞれが羅貫と密接に関わってくる訳ではありますが、ペアでのしっくり感とニアホモ感は羅貫と千艸が断トツだったなぁと思います。

登場人物の名前が、特にメインキャラの名前とか、スッと読めなくも無いけど書くことは困難な漢字が当てられてたり、専門用語とか独自の設定があり、一見難しそうな読むのが大変そうなイメージを持って読み始めましたが、とにかく面白かった!前作の氷の魔物の物語がツボにクリーンヒットだったので、それなりにハードルも上がった状態で読みましたが、もう易々と!軽々と超えてきました。

最初はごく少数の仲間しか居なかったのが、一歩づつの積み重ねで仲間が増え、協力者・賛同者が増えていく過程。旅の中で成長していく主人公と仲間達。そして全ての力を合わせて最終決戦‼少年漫画やRPGのような王道な熱さにニアホモ要素も加わった、まさに至高の作品でした。

タブロウゲート

イラストの美麗さに惹かれ購入しましたが、作者さんは元々イラストレーターとして活躍されていた方だったそうで、表紙はどれもこれも美しいとしか良いようのないクオリティ。表紙だけでなく本編の絵も変わらず美しく、まるで画集を眺めているような心持ちになります。

そして肝心な内容についてですが…。
特殊な家庭の事情と孤独を抱えた、帰国子女の氷川サツキが不思議なタロット画集「タブレット」と、破天荒な幼女・レディと出会う事から物語はスタートします。サツキが偶然手にしたタロット画集「タブレット」を開いた瞬間、本の中から人間が飛び出し、仰天するサツキ。そこに、「タブレット管理人」を名乗る外国人の少女・レディが現れ、タブレットについての説明を受けると共に、いきなり下僕認定されてしまうサツキ。

レディ曰く、タブレットの中にはタロットになぞらえて造られた22人の「タブロウ」と呼ばれる住人たちが存在しており、タブロウ達は固有の人格を持たず、強い「心象力」を持つ人間に「はがされ」て初めて人格を得て具現化させられる。要は、タブロウというのは擬人化したタロットカードのようなもので、タロット画集からタロットカードがはがされる事で擬人化し、はがした人間がそのタロットカードにどんな印象を抱いているかによって、タブロウの性格(時には外見まで)が変化する、ってな感じです。画集からカードをはがす事は、限られた人間に出来ない凄い事のようで、何故かタブロウをはがす能力を持っていたサツキは、「タブレット管理人」のレディと共に、タブロウの回収に乗り出すこととなる…。

あらすじを書くだけでも、大量の専門用語と独自の設定に圧倒されましたが、実際読んでみると驚くほどスルッと頭に入っていきます。設定がかなり綿密に練られていると、丁寧な描写のお陰でじっくり読めば読むほど、奥深い世界観に浸れます。劇画タッチな絵柄も相まって、現代設定の物語なのに異世界ファンタジー作品を読んでいるような気分を味わえました。

主人公のサツキはイギリスで生まれ育った帰国子女の高校生。富豪のおじいちゃんに虐待スレスレの厳しい教育を受け、それに耐えきれず日本へ単身引っ越す事に。そんな家庭環境故に、なんとなく自分に自信が持てず、その反動からか誰かの役に立ちたいという思いが強く、自分の身を顧みずに無茶をすることも。基本的には心優しい穏やかな性格の少年で、その優しさで人間やタブロウ達の心の傷を癒し、男女問わない天然たらしっぷりを作中でも大いに発揮します。

序盤から登場する月のタブロウのエリファス、そして太陽のタブロウのアレイスターがイケメンな上に、主人公を支えたり支えられたリするので、ニアホモ的な萌えもばっちり堪能出来ました。ニアホモ抜きにしても、先の気になるストーリー展開とたくさんの魅力的なキャラクターと、萌えが無くても十二分に楽しめる作品です。